AI活用で開発を1日で完了、年間5500万円削減した実例と再現法

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AI活用で開発を1日で完了、年間5500万円削減した実例と再現法

海外企業がAIを使いシステムを1日で書き直し、年間50万ドルのコスト削減に成功。この事例から学ぶ、日本の中小企業でも実践できるレガシーシステム改善とAI開発の具体的な手法を解説します。


アメリカのある企業が、長年使い続けてきた社内システムの中核部分をAIで1日のうちに書き直した。結果、年間50万ドル(約5500万円)のコスト削減に成功している。魔法のような話だが、使ったのは誰でも使えるClaude、やったことは「古いコードをAIに渡して書き直させただけ」だ。

この成功の裏には、再現可能な方法論がある。開発の専門知識がなくても、社内の古いシステムや非効率なツールを改善したい人なら、このやり方は応用できる。

JSONataという古いシステムが年間5500万円のコストを生んでいた

従来の開発とAI活用後の開発プロセスの違いを比較した図

この企業が抱えていたのは「JSONata」という言語で書かれたシステムだった。JSONataは、データの変換や抽出を行うための言語で、10年以上前から使われている。機能としては優秀だが、問題は処理速度とコストだった。

大量のデータを扱うと、処理が遅く、クラウドのサーバー費用がかさむ。計算してみると、このシステムを動かすだけで年間50万ドルのランニングコストが発生していた。新しい言語に書き直せば改善できるとわかっていたが、開発チームには時間がなかった。

そこで彼らが選んだのがAIによる自動書き直しだ。Claude(Anthropic社のAI)に古いコードを渡し、Rustという高速な言語に変換させた。所要時間は1日。変換後のシステムは、元のコードと同じ動きをしながら、処理速度が10倍以上に改善された。

AIに丸投げではなく「テストを先に作る」が成功の鍵

ここで重要なのは、AIに「このコードを書き直して」と依頼しただけでは終わらなかった点だ。彼らが最初にやったことは、元のシステムの動作を確認する「テストコード」を大量に作ることだった。

テストコードとは、「この入力をしたら、この出力が返ってくるべき」という期待値を自動で確認するプログラムのこと。元のシステムに対して数百パターンのテストを実行し、すべての結果を記録した。

ポイント


AIが書き直したコードが正しく動くかは、人間が目で確認するのではなく、テストコードで自動検証する。これにより、1日という短期間でも品質を担保できた。

AIに書き直しを依頼した後、新しいコードに対して同じテストを実行。元のシステムと同じ結果が返ってくれば成功、違っていればAIに修正を依頼する。この繰り返しで、最終的には元のシステムと完全に同じ動作をする新システムが完成した。

日本の現場で再現するための3つの条件

この方法を日本の企業や個人の現場に応用するには、3つの条件を満たす必要がある。

1. 書き直したいシステムが明確に動作している

元のシステムが「こう動くべき」という仕様が明確でないと、AIは正しい書き直しができない。逆に言えば、すでに動いているシステムやツールを改善する用途には向いている。仕様が曖昧な新規開発には使いにくい。

2. テスト可能な入出力がある

「この操作をしたら、この結果が返る」という関係が明確であること。Excelマクロ、社内の計算ツール、データ集計スクリプトなどは、この条件を満たしやすい。画面デザインやユーザー体験の改善には向かない。

3. AIが理解できる言語・形式で書かれている

AIは、Python、JavaScript、SQL、Excelの数式など、広く使われている言語やツールに強い。逆に、社内でしか使われていない独自ツールや、古すぎて資料が少ない言語だと精度が落ちる。

実際の手順:Excelマクロを例に再現してみる

Excelマクロ改善の5ステップを示した手順図

具体的な再現方法を、日本の現場でよくある「遅いExcelマクロ」を例に示す。

step
1
元のマクロが何をしているか、AIに説明させる。Claude、ChatGPT、Geminiのどれでもよい。マクロのコード全体をコピーして、「このコードが何をしているか説明して」と依頼する。

step
2
テストケースを作る。マクロに対して、「サンプルデータを5パターン用意して、それぞれの出力結果を記録して」とAIに依頼。記録した結果が「正解」になる。

step
3
AIに書き直しを依頼する。「このマクロをPythonで書き直して。処理内容は同じで、速度を改善したい」と指示。コードが返ってくる。

step
4
新しいコードでテストを実行。先ほど記録した「正解」と同じ結果が出るか確認。違っていれば、AIに「テストケース2の結果が違う。修正して」と依頼。

step
5
すべてのテストが通ったら完成。新しいコードを本番で使い始める。

この方法なら、プログラミングの深い知識がなくてもAIと対話しながら進められる。

削減できるコストは「時間」と「ランニングコスト」の2種類

AI活用によるコスト削減効果を数値で示した図

AIでシステムを書き直すことで削減できるのは、大きく2つのコストだ。

1つ目は時間コスト。元の記事の企業は、手動で書き直せば数週間かかる作業を1日で終えた。日本の現場でも、毎月3時間かけている集計作業を5分に短縮できれば、年間で30時間以上が浮く。時給換算すれば数万円の削減だ。

2つ目はランニングコスト。古いシステムは、動かすだけでサーバー費用や電気代がかかる。処理が遅いと、クラウドの課金額が膨らむ。書き直して高速化すれば、これらのコストが下がる。年間5500万円は極端な例だが、月数万円のクラウド費用が半分になるケースは珍しくない。


副業や個人でも、時給換算で考えると効果は大きい。月10時間の作業を1時間に減らせれば、その9時間を別の収益活動に充てられる。

失敗しないための注意点:AIは「理解」ではなく「模倣」する

AIにコードを書き直させるとき、最も注意すべきは「AIは理解していない」という事実だ。AIは元のコードの意味を本当に理解しているわけではなく、パターンを学習して似たコードを生成しているだけだ。

そのため、テストなしでAIが生成したコードをそのまま本番で使うのは危険だ。一見正しく動いているように見えても、特定の条件下でバグが出る可能性がある。

  • 生成されたコードは必ずテストする
  • 元のシステムと同じ結果が出るか、複数パターンで確認
  • 小さな範囲から始めて、徐々に範囲を広げる
  • 本番で使う前に、テスト環境で数日動かしてみる

この4つを守れば、リスクを最小限に抑えながらAIの恩恵を受けられる。

今日から始められる:まず社内の「遅い処理」をリストアップする

この方法を実践するための第一歩は、改善対象を見つけることだ。以下のチェックリストを使って、社内やあなたの業務の中で「遅い処理」「コストがかかっている処理」を洗い出してほしい。

  • 毎月1時間以上かけて手動でやっている作業はあるか
  • Excelマクロで処理に10分以上かかるものはあるか
  • 古いツールやシステムで「もっと速くならないか」と思っているものはあるか
  • クラウドサービスの月額費用が気になっているものはあるか

1つでも当てはまれば、それが改善の候補だ。まずはその処理の「入力」と「出力」を紙に書き出してみる。それができたら、あとはAIに相談するだけだ。

実際に動かしてみれば、「AIでここまでできるのか」という実感が得られる。その実感が次の改善につながり、結果として時間とコストの削減が積み重なっていく。

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